ミラン・クンデラは、私の好きなチェコの作家である。
人間に与えられた80年余の寿命は、単なる量的所与、外的性質ではなく、人間の定義そのものの一部であることを我々は気付いていない。人生の相対的な短さ(わずかに許された限りある時間)故に、私たちは祖国や愛という概念を感傷的に生み出したのである。
また人の記憶というものは、生きた人生のごく微細な一部分しか保存せず、時に人はそれを無意識のうちに歪曲・捏造し、事実の別の側面にのみ重要性を与えたり、他の諸々の事象との因果関係を忘れることで、記憶をでっち上げたりもする。
人間は何も理解せず何も「知らない」存在であり、その無知こそが人間の根源的状況なのだというクンデラは、相変わらず人生に懐疑的、冷笑的な人だ。
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